まえがき
ここに記載している内容は、客観的情報と主観的情報を私自身の言葉で記したものです。
つまり、野鳥関連の複数の図鑑や専門書で勉強した内容とネットの情報およびバーダーさんとの情報交換で得た知識に、フィールドでの自分自身の実際の観察経験を織り交ぜてまとめたものです。
まだまだ勉強中のバーダーなので、内容に必ずしも責任が持てる訳でもありません。この点をあらかじめご了承下さい。
基本情報
●全長14cm ◎季節性:冬鳥 ☆雌雄異色
魅力について
ジョウビタキは、”里山の冬鳥”ともいわれ、代表的な冬鳥として全国に広く知られています。
しかも、公園だけでなく、個人の庭先にもやって来ることも珍しくはない実に”身近な冬鳥”として親しまれています。
オスは凜々しく力強い印象のお顔で、体下面や尾羽の赤橙色が目立ちとても美しいです。
一方、メスは全体的に薄い茶褐色あるいは灰褐色で地味な印象ですが、上品で可愛らしい感じがするので、派手なオスに劣らずファンは多いようです。
私自身もとても気に入っている野鳥の一種なので、出会うといつも以上に気合いを入れて撮影しています。
名前について
漢字表記では、尉鶲が一般的です。「尉」は、背景には能楽の翁(おきな)の能面という意味があり、直接的には「銀髪」を意味することになります。
オスのお顔の印象を敬意と親しみのこもる「翁」というイメージで捉えたのでしょう。オスの銀色の頭部からご老人の白髪を連想したであろうことは容易に察しが付きますね。
他には、上等なヒタキという意味で「上鶲」、秋に”常”に渡って来て”常”に身近で見られるという意味で「常鶲」とも書き表します。
ちなみに、特にオスの翼にある白い斑紋から連想して「紋付鳥(もんつきどり)」とも呼ばれることがあります。
英名は、Daurian Redstart です。redstart はジョウビタキの類やムシクイの類に付いていることが多いようですが、これ以上は不明です。
ところで、「~ビタキ」という名の鳥がよく知られているだけでも何種類かいますが、そもそも「ヒタキ」というのはどういう意味なのでしょうか。
昔、火を熾(おこ)すときに使った火打石をご存じでしょうか。火打石を打ち合わせる音に似た声(ヒッ、ヒッ/カッ、カッ)を出すところから、「火焚き(ヒタキ)」の名が付いたとされているようです。
ついでながら、ジョウビタキはその「~ビタキ」の代表格です。
それは、俳句の世界で「ヒタキ」と表せば、普通は「ジョウビタキ」を意味することからも分かります。
分布と生育場所について
本州以南の全国に冬鳥として渡来し、平地から山地の開けた場所(林、公園、人家の庭)に生息します。
比較的明るい場所を好み、どこでも低木があれば棲みつくので、林の縁の小さな木や杭などの人工物によく止まっています。そこから地上を見張っていて、昆虫などを見つけると舞い降りて捕食する姿を容易に見ることができます。
また、住宅地の路地を歩いていて見かけることも珍しくはありません。
その結果、意外なほど目にする機会が多い渡り鳥と言えるでしょう。
”身近な冬鳥”と言われる由縁です。
外見的特徴について
オスとメスとでは姿は同種と思えないほど異なっています。
オスは、頭上と後頸部は白灰色で、顔から喉は黒く、背は黒みを帯びた褐色です。両翼には大きな白い斑があり、よく目立ちます。
尾は、中央だけ黒く、他は赤みの強い橙色です。
体下面も赤橙色(せきとうしょく)で日に当たると鮮やかで冬枯れの環境においてよく目立ちとても美しいです。
メスは、頭部から体上面が灰褐色で、体下面は色が淡い灰褐色です。オスと共通しているのが赤橙色で、腰と尾羽に見られますが、オスよりも淡いようです。
オスと同様に、両翼に白斑紋がありますが、オスのものよりも小さいです。
同じ樹木の実を食べるためにルリビタキの雌とジョウビタキの雌が同時に現れるのを見たことがありますが、一瞬の動きの中でもこの両翼の白斑が目立つので区別できる場合が多いと経験から言えます。
生態的特徴について
明るい空間に面した林の縁などにある低木の横枝や近くの杭などによく止まっていて、そこから地面に舞い降りて虫などを補食し元の場所やその近くに戻ってくるのを撮影中によく目撃します。
しかし、他の多くの野鳥がそうであるように、やって来てしばらくは用心深く、高い木の上部や電線などに止まっていることも多く、すぐにはなかなか近くでは撮影させてくれません。
私のフィールドでは、10月の下旬にはやって来るようです。(ルリビタキも早い個体は同じ頃にやって来ます。)
比較的撮影しやすい低い場所に止まるようになるのは12月に入ってからです。
とは言っても、環境の差があり、人通りの多いところでは早く人に慣れ、散歩者が行き交うそばで餌を探して歩いていることもありますし、ほとんど人が来ないような原っぱでは、いつまでも近寄らせてくれません。
冬季は木の実をよく食べるので、秋も深まって冬の気配が漂い出す頃、赤い実があるところに目星をつけておくとフォトジェニックな光景が見られるかもしれません。
果肉がほとんどなく種だけのような実にもよく来ます。
雌雄に関係なく縄張りを作って一冬を過ごします。
キセキレイなどと同様に、ジョウビタキの縄張り意識は極めて強いことで知られています。
私自身はまだ目撃したことはないのですが、カーブミラーや自動車のミラーに映った自分の姿にライバル心を剥き出しにして攻撃をしかける習性は広く知られています。(ネット上にその種の画像があげられているので容易に確認できるでしょう。)
雄と雌との間でも激しい縄張り争いをすると図鑑などでは紹介されていますし、渡来直後に実際にそのような場面を何度か見たことがあります。
2018年11月4日:追記
メス同士が激しく縄張り争いをしているシーンに遭遇しました。
概算で半径20mくらいの空間を、2羽がものすごいスピードでスクランブル発進の掛け合いを何度も繰り返します。
また、普段の地鳴きとは異なって、極めて短い音を連打させて発する警告音(蜂の羽音に近いような音で、ブーンという音とカッカッカッという音が合わさったような鳴き声)も何度も聞きました。
30分ほどで一応静かになったのですが、帰りに同じ場所を通った際にまだ時折スクランブルをしたり警告音を発している状況でした。
この後、どのように決着するのだろうと気になりますので、観察を続けたいと思います。
鳴き声(囀りと地鳴き)について
囀りの期間は5月~7月なので、残念ながら日本にいる間には聞かれない、聞かれるのは地鳴きのみということになっています。(しかし、実際はまれに聞かれることもあるようです。)
地鳴きは、図鑑によると、縄張り宣言として、「ヒッ、ヒッ」や「カッ、カッ」あるいは「カタカタ」のように鳴くとあります。
私自身の観察経験では、「ヒッ、ヒッ」というよりも「フィー、フィー」と聞こえるように思うのですが、聞き方の問題なのかもしれません。
ちなみに、この「フィー、フィー」ですが、私の経験では必ず実際よりもかなり高いところから聞こえてくるように感じます。たとえ、目線の高さにいても樹の上の方から聞こえてくるように錯覚してしまいどうしても上を見てしまいます。
また、ルリビタキの地鳴きにとても似ているように思います。冬を3回経験してようやく大体は区別がつくようになりました。(林の奥、薄暗いところから聞こえてきたらルリビタキの可能性が極めて高いと経験から言えます。)
鳴く際に、頭を下げると同時に尾羽をピクピクと振るような動きが見られることがあり、一連の動きがお辞儀のように見えます。
鳴く際に、空を仰ぎ見るようにし、口を驚くほど大きく開けて声を出していることも多々あります。
渡来して間もない頃に見かけることが多いような気もするので、縄張り宣言の一種でしょうか。
面白ポイント
人に慣れやすい傾向があります。
フィールドにしている公園内で、除草など林内の清掃を手作業でするボランティアさんがいるのですが、この人が作業をしているといつの間にかすぐ近くにジョウビタキがやって来て横枝や杭に止まって様子を見ていることがあるそうです。
どうやら、作業中に出てくる昆虫類が目当てのようです。
同じ理由でしょうが、畑仕事をしている人の近くに出現することも珍しくはないと聞きます。
慣れると人をあまり恐れないようで、その内に人の手から虫を直接もらうほど慣れることもあるようそうです。(某TV番組でその検証を行って見事成功していました。)
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