いきなりですが、このカワセミはオスでしょうか、それともメスでしょうか?
カワセミを観察されたことがあるみなさんはどう判断されますか?
カワセミの雌雄の識別方法の一般的な定義
カワセミの雄と雌の区別に関しては図鑑でもネット上でも下記に引用したウィキペディアの内容と同じことが記載されていると思います。
オスのくちばしは黒いが、メスは下のくちばしが赤いのでオスと区別できる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AF%E3%82%BB%E3%83%9F
バーダーさんに教えられたのか、今では私のフィールドで池の周りをただ単に散歩しているだけの人までもが、カワセミの嘴の色に言及することがあります。
メスのカワセミの嘴の色
まだ幼さが残っていて成鳥に成り切っていませんので、これからもっと赤の部分が広がるはずです。
オスのカワセミの嘴の色
上面や側面に比べると、真っ黒というわけではなく少し薄い感じがありますが、全体的には黒いと言えます。
最初の画像はオス?メス?
みなさんはどう思われますか?
赤い部分があるんだからメスだろう。
赤いと言っても面積的にそんな広くないしオスじゃないの…。でも、赤いところが気にはなるわね、やっぱりメスかしら。???
とにかく、下の嘴が赤いんだからメスで決まりですよ。簡単、簡単!
それにしては赤い部分が小さくない?やっぱり引っかかるな、そこ。
…??う~ん ……???
正解はオス!!!
念のための「色による識別の注意点」
概して、ネット上の画像で色を正しく判断することは厳密な意味では不可能です。
理由の詳細は複雑で難しくなりますから省略しますが、一つだけ簡単な例を上げておきます。
ルリビタキのメスタイプに関して、例えば、
「羽根の黄色の部分がオスならもっと橙色に近いはずだ」
というコメントがあったとします。
これはほとんどナンセンスです。
なぜならその画像を見ている人のモニタによって色味が異なるからです。
それ以前に撮影時の光源によっても左右されます。
どのように現像&編集したかにもよります。
要するに様々な要因が関係しているので、微妙な色を論じる際は余程の注意が必要であり、同時にその認識が共有される必要があります。
私自身は上記のような理由から、被写体が何にしろ色味や彩度について論議することからは距離を置いています。
前置きが長くなりましたが、カワセミの話に戻ります。
経験されている方にとっては「あるある」の世界なのですが、カワセミが口を開けている時に強い光が当たるとその透過光の影響によって下嘴が全体的に赤く見えることがあります。
その瞬間だけを撮影した人は間違いなく「メス」だと判断するでしょう。
そもそも口の中が赤いためです。
我々の手を太陽の方に向けると毛細血管の影響で赤く見えるのと似たような現象でしょう。
逆に、安易に赤味が無いと判断するのも危険です。
なぜなら、真横から見ているとメスであっても下嘴の赤みは確認できない場合があります。理由は、赤いのは主に底部だからで、側面も含めて必ずしも赤い訳ではないからです。
これには個体差があり、一概に赤い部分を限定はできないようです。私がこれまでに撮影した個体の中に、側面も含めて下嘴のほとんど全てが赤く見えるメスがいました。
強い光が当たると黒い部分などまったくないほど真っ赤に見えます。
また、成長度合いにもよるかもしれません。
カワセミが上を向くなどしてオスの嘴の底部に直接太陽光が当たっていると、底部は黒味が薄いので、観察者からの角度によっては口の中の赤味が反映されて赤茶っぽく見えることがあります。
これもメスだと誤解される原因になりえます。
したがって、下嘴底部の色そのものが赤いのか、口の中の赤味が影響しているのか、その点を冷静に分析して判断する必要があります。
また、現像&編集時に暗部を明るくしようとして、結果的に嘴の影の部分が実際よりもかなり明るくなって薄い赤味を帯びた茶色に見えて混乱するかもしれません。
このようなことから、赤味がかっているというだけで即断するのではなく、疑ってかかるだけの用心深さが必要かもしれません。
同じ個体を、異なるアングル、異なる光の状態で撮影した複数のコマで赤味の有る無しを判断できれば確実性が増すと思います。
そのためには、良いシャッターチャンスの時だけ撮影するのではなく、いわゆる”証拠写真”を撮っておくことも大切なのではないでしょうか。
一番上の「問題」の画像はここに書いた注意点を考慮する必要はありません。光のいたずらでもなく、確実に赤い部分があることを複数の画像で確認しています。
根拠となる外国の文献を発見!
時間はかかりましたが運良く根拠となる資料にたどり着くことができました。
その1
上は画面をキャプチャしたものなので、テキストに掘り起こしました。翻訳サイトなどで、コピー・アンド・ペーストして確かめてみてください。
If you can see an adult bird well enough, male and female can be told apart, but not by their plumage. The clue is in the bill. If the bird is male, the bill is black. If it is female, the lower mandible is mostly reddish or orange, perhaps with a hint of brown, with the black restricted to the tip. The size of the black tip varies in females, but it is usual for it to cover one sixth to one quarter of the length of the bill, although it can be as much as two thirds, and on a few individuals the black is completely absent. Some males do have a bit of colour at the base of their lower mandible ーill-defined muted red or orangey blobs, or a suggestion of brown perhaps.
成鳥をよく観察することができれば、オスとメスの識別は可能です。が、羽では無理です。手がかりは嘴にあります。オスの場合は嘴が黒く、メスの場合は下嘴は、黒いのは先端だけで、普通は赤味を帯びていたり、オレンジ色を帯びていたりします。少し茶色がかっていることもあるかもしれません。 先端の黒い部分の大きさはメスによって異なりますが、通常は嘴の長さの6分の1から4分の1を占めています。もっとも、3分の2ほどになることもあり、また個体によっては完全に黒がない場合もあります。オスの中には確かに下嘴の基部に少し色がついているものもいて、不明瞭で薄い赤色やオレンジ色だったり、もしかすると茶色がかっている場合もあるかもしれません。
その2
SEXING
Male with at least two-thirds of lower mandible black, sometimes becoming pale orange at base. Female with two-thirds of lower mandible orange, becoming dark brown or black towards distal third.
雌雄識別
オスは下嘴の少なくとも3分の2が黒色で,基部では淡いオレンジ色になることもあります。メスは下嘴の3分の2がオレンジ色で,先端部3分の1辺りでは暗褐色または黒色になります。
前者のほうが詳細ですね。
あとがき
今日半日これを調べ記事にするのに時間がかかりましたが、根拠が得られてスッキリとしました。
一部とは言えオスの下嘴にも赤みを帯びた部分があるというのは今後の雌雄の識別に大いに参考になります。
みなさんの参考になれば幸いです。
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