まえがき
ここに記載している内容は、客観的情報と主観的情報を私自身の言葉で記したものです。
つまり、野鳥関連の複数の図鑑や専門書で勉強した内容とネットの情報およびバーダーさんとの情報交換で得た知識に、フィールドでの自分自身の実際の観察経験を織り交ぜてまとめたものです。
まだまだ勉強中のバーダーなので、内容に必ずしも責任が持てる訳でもありません。この点をあらかじめご了承下さい。
基本情報
●全長14cm ◎季節性:夏鳥 ☆雌雄異色
キビタキの魅力
桜の花も終わった頃から姿を見せ始め、若葉眩しい新緑の林で黄色い体色の小鳥が美しい囀りを聞かせてくれます。
キビタキの魅力は何といっても、オスだけの特徴である歌声と体色の色鮮やかさにあるでしょう。
薄暗い林の中から明るい林の縁などの枝にスーッとやって来た時などに出会うと、ハッとするほど美しいです。
名前について
キビタキの漢字表記は「黄鶲」です。黄色いヒタキということですね。
誰が見ても感嘆するオスの色鮮やかな黄色が由来です。
英名は、Narcissus Flycatcher です。
Flycatcher は特にヒタキ類に顕著に見られるフライングキャッチという捕食行動の習性に基づく名称です。
Narcissus は、「ナルシスト(正確には、ナルシシストではありません)」の語源となっているギリシア神話に出てくる美少年ナルキッソスの名前です。
そのナルキッソスは、泉の水に映った自分の美しい姿に恋い焦がれて絶命し、水仙の花に化したのです。
キビタキの黄色を見て、黄色い水仙を連想し、そこからさらにギリシア神話のナルキッソスを思い浮かべ、この名前に使ったのだろうと想像できます。
分布と生育場所について
夏鳥として九州以北に渡来し、繁殖もします。
ほぼ全国の山地から平地の林(主に落葉広葉樹林)で見られるでしょう。
私のフィールドで姿を見せるようになるのは、桜の花がすっかり終わった頃からです。
そのために、新緑とともに訪れるというイメージです。
その後は秋の中頃まで比較的長くいます。渡り期には市街地の公園や人家の庭に姿を現すこともあります。
周囲に高い木があり、樹間に空間が広がっている、比較的明るい林を好んで生活するようです。
私の日々のフィールドの公園では、9月下旬から遅くとも10月になるとすぐに、鳴き声や見かける頻度から判断して個体数が急に増えます。
多いときは、1時間半から2時間のコースを歩いて、10ヶ所ほどで鳴き声を聞いたり姿を見ることができます。
おそらく、ここで繁殖する個体がある程度数いますが、そこに渡りの途中で立ち寄ったと思われる個体が加わるのだろうと考えています。
外見や生態の特徴について
オスとメスでは姿が全く異なるので知識がないと同種だとは分かりません。
若いオスはメスと同色なのでさらに混乱します。
オスの成鳥の最も顕著な特徴は、体下面は黄色あるいはレモンイエローで、喉が鮮やかな橙色です。
まれにこの喉の橙色がない個体もいるそうです。(←ネットの画像で確認できます)
体上面は黒色ですが、背から腰にかけては黄色で目立ちます。(翼のたたみ方によってはあまり見えないこともあります。)
両側面に目立つ白斑があり、眉斑は黄色で長いのも特徴です。
メスは、頭部および体上面がオリーブ褐色で、喉から体下面は白色ですが、胸の辺りは濃淡があります。
秋になっても若いオスはまだメスと同じ色をしているので雌雄の区別は難しいでしょう。
黒いはずの羽に褐色の羽があれば、それは換羽中を意味します。(左画像参照)
(2018年4月26日撮影)
換羽とは、古い羽毛が抜け落ちて新羽に替ること。
換羽は繁殖時期や渡りの時期と関連し,少くとも年1回,鳥によっては年2~3回換羽するそうです。
明るい空間に面した大木の下の方の枝によく止まります。
そこで昆虫をフライングキャッチで捕食したり、長い間美しい囀りを聞かせてくれることもあります。
秋になると、森の恵みのミズキなどの樹木の実を好んで食べるようになります。
実の脂肪分を蓄えて南下の準備をしているのかなと推測しています。
初夏を迎えると幼鳥を見かけることが多くなって、旅立つ秋までいろいろな成長段階の特徴を知ることができる。
☆砂浴び
6月の下旬にこのような場面に出会いました。羽が黒くなりきっていないので、前の年に生まれた個体でしょうか。
このオスは、どうやら「砂浴び」をしていたようです。
砂浴びとは、羽毛についた寄生虫を駆除するために、乾いた砂や土を浴びることです。生きるための知恵の1つですね。
鳴き声(囀りと地鳴き)について
繁殖期に、オスはなわばりの宣言とメスの歓心を得る目的のために、朝早くから透明感のある高らかな囀りを行います。
その鳴き声が楽器ピッコロの出す音を思わせることから、”森のピッコロ奏者”と呼ぶ人もいます。
確かに、囀りの一部には「ピッコロコロ」とか「ピッコロロ」のように聞こえるフレーズがあり、楽器のピッコロの名称そのもののように聞こえたり、ピッコロが出す音を連想させたりもします。
典型的な囀りは、「ピーリッ」の後に「ピッピリリ、ピッピリリ」と繰り返すのが特徴です。
ですが、一様ではないですし長く複雑に鳴くので声を言葉にするのは難しいです。
同じ夏鳥のオオルリの囀りにとても似ていると感じます。
また、コジュケイやセミのツクツクボウシの鳴き声を真似て、「チョトーコイ」とか「ツクツクオーシ」と囀ることもあるようです。(後者の鳴き声は2018年の初夏に一度だけ聞いたことがあります。)
普通は樹間を移動しながら囀ることが多いようですが、高木の下の方の横枝にじっと止まったままで長時間囀る姿を何度も見たことがあります。
色鮮やかな姿の美しさに加えて、その囀りの美しさに聞き入りました。
地鳴きは、「ヒィ、ヒィ」とか「ティリリリ」と鳴き、最後に「クルルルッ」のように聞こえる声を出しますが、囀り同様に言葉にするのは難しいです。
2018年10月の観察経験から個人的な感想として言うと、秋の地鳴きは聞き慣れているはずの春夏の地鳴きとは少し違うような気がしています。(「フィフィ・ヒィヒィ」を発しないと、コサメビタキの地鳴きと似ている場合があります。)
ついでながら、鳴き声に関しては、ネット上で音源を検索して聞き慣れることにしています。
聞こえ方は人によっても異なりますので、言葉にしたものより実際の音に慣れる方がフィールドでは役に立つと思います。
面白ポイント
フィールドにしている公園内の散策道に近い林の中から、「パチパチ」「カチカチ」という強い音の後に「ブーン」という音もして、何かと思ったらキビタキの姿が見えました。
後から分かったのですが、前者はオス同士の縄張り争いの際に嘴を強く速く合わせて出す音らしいです。
大きな蜂のような「ブーン」という音はどうやって出すのか分かりませんが、威嚇のために出している音らしいです。
普段なかなか聞くことができないので貴重な体験をしたと思いますが、キビタキの立場になると生存競争が大変なんだろうなと同情します。
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