この記事は、2019年4月10日に旧ブログ「野鳥の写真館”一期一会”」に書いたものです。新ブログでも継続して掲載したい記事は引っ越しさせることにしました。この記事もその1つです。内容はほとんどは2019年当時のままですが、必要に応じて現在の状況を反映させたり注釈を入れたりしています。また、引っ越しの際に、誤字脱字や表現の変更等の多少の修正も行いました。
野鳥の撮影を始めて4年目(2019年1月)に入りました。とは言っても、野鳥撮影は完全に趣味の範囲内であり本格的な機材を持っているわけでもないので、年数だけは中級レベルかもしれませんが、実態はまだまだ初心者レベルです。
※2022年で7年目に入ったので、初心者とは言えませんが、相変わらず機材は同じものを使っています。
ですが、私が野鳥撮影のベテランに見えるのか、
たまにフィールドで会うバーダーさんに撮影時のカメラ設定について質問されることがあります。
また、初心者らしい初対面のバーダーさんから設定に関する質問をされたこともあります。
あるいは、ある特定の野鳥のポイントで”出待ち”をしている際に顔見知りのバーダーさんとカメラの設定の話になったことがあります。
主に尋ねられるのは、あるいは話題に上がるのは、次のような項目に関してです。
「オート? or マニュアル?」
「シャッター速度は?」
「感度設定(ISO)はどのくらい?」
「連写する or しない?」
私自身は野鳥の撮影のノウハウを教わる相手もなく、試行錯誤を繰り返し3年目の途中からようやく今のスタイルに落ち着きました。
野鳥撮影の専門家の知り合いもいませんので、「回り道したな」というのが正直なところです。
そこで、野鳥撮影初心者マークのみなさんのお役に立つのであればと思い、「私のスタイル」を紹介しようと思います。
野鳥撮影用の機材の紹介
私の野鳥撮影は「探鳥ウォーキング」というスタイルなので、三脚は使いません。一脚も使いません。運動として歩きながら撮影するのを前提とします。
また、カワセミの飛び込みシーンだけを狙うとかヤマセミの定点撮影をするなどというのは別の世界のことなので助言できるようなことはありません。(※今現在は、機会があれば、カワセミの飛び込みシーンの撮影はやります)
あくまでも、一般的なバードウォッチングを純粋に楽しむことを目的としています。
前置きが長くなりましたが、私が使っているのは一眼レフカメラと超望遠ズームレンズの組み合わせです。
メーカーは違っても、一般的なバーダーさんの典型的な機材レベルだと思います。
◎カメラ ⇨ Nikon D500
◎レンズ ⇨ AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR
この組み合わせでは、カメラが「APS-C」機なので最大750mmでの撮影が可能です。
ちなみに、レンズメーカー、タムロンの【SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2】なら、900mmでの撮影が可能です。100mmの差は大きいのです。
設定の基本的考え方…感度オート撮影
野鳥、特に小鳥をとりまく”光”環境は刻一刻と変化する場合が普通なので、すべてをマニュアルにするのは現実的ではなく、何かをオートにした方が得策です。
絞りとシャッター速度はマニュアル、ISOはオート
風景写真をやっている人は—–特に理由もなく単に習慣で—–「絞り優先オート」で野鳥撮影も行う傾向があるようです。実は、私自身も当初はそうでした。
乗り物の撮影をやってきた人は「シャッター速度優先オート」に慣れているので、野鳥が動く被写体ということもあり、ごく自然にシャッター速度優先で撮影するかも知れません。
飛び出しシーンとかちょっとした飛翔シーンなどは特にそうかも知れません。
私は絞り優先オートで撮り始めましたが、この設定で不都合を感じることがしばしばで、試行錯誤の結果、
『シャッター速度と絞りは固定(マニュアル)でISOをオートに設定する』
という、いわば
「ISO感度オート撮影」
にたどり着きました。
この設定の利点は、
☆感度の戻し忘れが起きない
絞り優先オートで撮影していた時は一時的に感度を上げる(時には下げる)場合がありましたが、撮影条件が変わっても設定を戻し忘れて無駄に高感度で撮影したことが何度もあります。
そもそも動きの激しい小鳥を撮影しているときに小まめに設定を変更している余裕はありません。シャッターチャンスを失ってしまいます。
☆必要最小限度のノイズに抑えられる
マニュアル設定している絞りとシャッター速度の組み合わせに必要なISOに自動設定してくれるので無駄に高感度になりません。
例えば、枝に止まっている野鳥が被写体として、シャッター速度「1/125秒+ISO 200」で撮影できるところを、うっかり「1/2000秒+ISO 3200」で撮影したとしたら、カメラによるでしょうが、ノイズを大量発生させ精密描写が損なわれる結果になるでしょう。
私はノイズが嫌いなので、できるだけノイズを抑えた撮影をしたいと思って撮影に臨んでいます。
こういう考え方(価値観)を前提に、下記に具体的に設定を説明したいと思います。
設定…シャッター速度
手ブレをしない最低速度に設定する。
通常は、初期設定として、「1/125秒」に設定しています。(※2022年現在は、「1/160秒」を基準としています)上述したように、ISOを無駄に高くすると、その分不必要なノイズが発生しますから、それを防ぐためです。
もちろん、このシャッター速度では露出オーバーになることもあります。その場合は、明るさと被写体の色に応じて「1/160秒~1/250秒」ほどに変更しています。
これによりISOを100~200付近に維持できます。
逆に、暗すぎる場合(私の場合、ISOが3200を越えそうな場合)は、身体の1点を何かで支えることができれば「1/100秒~1/50秒」の間を使うこともあります。
補足
私の機材で私が撮影すると、1/100秒以下のシャッター速度では、手ブレの率が顕著に高まります。そのために、ISOが高くなったとしても”チャンス”では、この範囲は使いません。
しかし、腰を下ろして、あるいは近くの木に身体をあずけて、あるいは岩や柵などの上にカメラを載せて撮影できる場合は「1/50秒」までは使うことがあります。
つまり、自分の機材で手ブレを起こしにくい最低速度を見つけている訳です。(←これはとても重要です)
どんなに素晴らしいシャッターチャンスであったとしても、ブレブレの写真では棄てるしかないからです。
設定…絞り
レンズの開放値よりも約1段絞る(例:F5.6 → F7.1~8)
銀塩カメラの時代から、レンズは開放値から1段絞って使った方が解像度が向上すると言われてきました。デジタルの時代になっても、それは基本的には事実だろうと思います。
特に私が使っている超望遠レンズでは、開放値の描写性能と1段絞って撮影した場合の描写性では明らかに差があります。(他のレンズなら違いが分からなくても、このレンズなら写真撮影の初心者でも気がつくと思います。)
開放値で撮影した場合に、被写体の明るい羽の部分などに簡単にフレアが生じたり、全体にシャープさが不足し「ソフトフォーカス」のような描写になったことはありませんか。
(「必ずなる」というよりも、光の状況によって発生の仕方は異なるので、木洩れ日など身体の一部に強い光が当たっているようなときに絞りを変えて撮影してみてください。描写の違いがお分かりになると思います。)
私のレンズは上記のような傾向があります。
今は少し絞って「F 7.1」で撮影するのを原則としています。開放値にするのは、ISOが6400を越えるような場合だけです。
※最近、キヤノンを中心に超望遠レンズの選択肢も増えましたので、中には絞り開放で顕著なフレアの発生も見られないレンズもあるかもしれません。最新の情報を収集してください。
これによりフレアが発生しにくくなり、羽根の模様がよりクッキリとし、模様一本一本の筋にいっそう立体感が増します。
この高解像な描写を使わないのはもったいないです。
補足
一般な焦点距離のレンズなら、上記のような開放値の”欠点”をレンズの”個性”として積極的に利用する場合もあります。
設定…感度(ISO)
ISOはオートに設定する
シャッター速度と絞りは自分でコントロールし、感度設定はカメラにやってもらうわけです。
この利点は上述しましたので詳細は割愛します。
一つ付け加えると、
野鳥撮影において、ころころ目まぐるしく変わる光の状況の中で適正な感度を瞬時に判断して設定することは事実上不可能です。
大まかな感度設定でも撮影はできますが、ノイズを最小限に抑えるという意味では小まめな変更が必須です。
そういう前提に立つと、「感度オート撮影」という結論に達します。
この設定で大切なのは、感度の上限をどこに設定するかです。低すぎると露出が極端にアンダーな写真を大量生産することになります。
ですが、高くするとノイズが増えます。
高感度ノイズの量はカメラによって異なります。
また、ノイズ耐性は撮影者によってもさまざまです。つまり、同じ機材を使っても人によってどこまでなら受け入れられるのかが異なるのが普通です。
したがって、「自分はどこまで耐えられるのか」を探る必要があります。
私の場合、上限を、以前は「3200」に、今は「6400」に設定しています。
この条件では、光の回り方がよいと予想外に綺麗な画質が得られることが分かったからです。
その一方で、カワセミの撮影時によくあるのですが、水面の反射で「逆光状態」になっているときは耐えられない写りになることが珍しくありません。
しかし、飛翔シーンにはこの感度が必要なのでここで妥協しています。
補足
被写体に当たっている光は変わらないのに、「スポット測光」であってもセンサーが背景や周囲の明暗の影響を受けて露出が大きく異なる場合は、ISOもマニュアルに切り替えて撮影した方がよいかもしれません。
ただしその場合は、撮影後にISOをオートに戻すのを忘れないように注意する必要があります。
野鳥撮影での「あるある」ですが、一時的な設定を戻し忘れてシャッターチャンスに大失敗をしてしまったことを多くの人が経験しているようです。
連写する? or しない?
単写か連写か?
これは善し悪しや常識やノウハウの問題ではなく、完全に個人の好みの問題のような気がします。
私は連写モードに設定しています。
野鳥撮影の専門家から見たら正解かどうかは分かりませんが、連写する場合は、
「ワンシャッターで3コマ連写」を繰り返す
を原則としています。
理由は、例えば、10枚連続撮影した場合に微妙にピントを外したまま10枚撮影されることがあるからです。(※あくまでも、私の機材での話です)
3枚ごとにAF(オートフォーカス)をやり直すことによって「保険」をかけています。
つまり、ワンシャッターで10枚連写するよりも、3コマ連写を3回繰り返して撮影した方がピントに関して良い結果が得られます。
ただし、
飛び出しシーンや飛翔シーンを撮影する場合は、ワンシャッターで必要なだけ連写します。
特に、カワセミの飛び込みシーンや求愛給餌、交尾のシーンなどは「連写」しか選択肢はありません。
連写することで、カメラに撮ってもらっているといってもよいでしょう。
小さな野鳥の場合、連写した結果、「このコマとこのコマの間のシーンが欲しかった」というようなことはあると思います。
しかし、だからといって、そのシーンを単写で狙えるかというと、理論的には人間の反応速度では追いつかないので不可能です。
できるとしたら、予測撮影ですが、それ自体が「運を天に任せる」要素が多少なりともありますので、「一撃必殺」は厳密には無理ということになります。
あとがき
独学のおじさんバーダーが試行錯誤の末にたどり着いた野鳥撮影のためのベスト設定((^^;))をご紹介しました。
あくまでも気楽に公園や低山を歩いてバードウォッチングを楽しむのを目的とした、しかし写真はある程度のレベルのものを撮影したい、そんなバーダーさんにお役に立てば嬉しく思います。
この記事をお読みいただきありがとうございました。m(._.)m
2022年4月6日 追記
大きな流れとしては、一眼レフ機からミラーレス一眼へと移行していると言えるでしょう。
それに伴い、キヤノンを中心として、野鳥撮影用のカメラ&レンズも選択肢が増えています。
キヤノンの超望遠レンズ群の選択肢には目を見張るものがあります。しかもまだ発売予定のレンズもあるそうですから、もっと選択肢が増えることになります。
その中には、きっと、初心者が購入しやすいレンズであっても開放絞りが安心して使えるものがあるでしょう。
野鳥撮影において、明るさはとても重要です。
これからレンズを購入予定の人は、開放絞りから安心して使えてできる限り明るいレンズを選択してください。
高い買い物ですので、カメラおよびレンズとも、事前に最新の情報を収集することも大切です。
よい機材と巡り合えることを願っています。
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